眠りの原点は、自然に眠る樹木葬
お墓の原点は、埋葬してそこに土を盛る墳墓だという、樹木葬のパイオニアである中本隆久と、明治天皇の玄孫であり、長年にわたり古墳を研究してきたオーソリティの竹田恒泰が、今回の霊園づくり、お墓づくりについて語りあいました。

古墳墓をつくるきっかけはお父さんのお墓をどうするかということだったとお聞きしました。

父は三男坊なので既存の竹田家の墓所には入れません。そこで別に上円下方墳をつくろうと思ったのですが、つくってくれるところが見つからない。そんな折、中本さんを紹介されてこのプロジェクトがはじまりました。

私は今から30年前の1995年にガーデニング霊園を千葉県の佐倉に開園し、それが日本初の庭園式樹木葬といわれているのですが、お墓の原点は、自然の中に眠る墳墓だったのではないかと思っています。

佐倉ふれあいパーク

どの時代のお墓を基準とするのかにもよりますが、墳墓は土を盛ったお墓のことをいい、古来、今に伝わる墳墓が古墳と呼ばれます。ただし古墳時代には天皇や豪族などしか古墳はつくれませんでした。

それは近代のお墓も同じで、庶民がお墓を持つようになったのは、明治以降といわれています。

仁徳天皇陵
日本最大の古墳にして世界最大級の墳墓。
被葬者は、宮内庁により仁徳天皇の陵墓に治定されている。
時代に合わせてアップデートするということ

歴史の中で紡いできた慣習やしきたりは、文化の大事な部分だと思いますが、核の部分は残しながら時代に合わせてアップデートしていかないと、受け入れてもらえないものになってしまうと思います。

私が考案した庭園式樹木葬も、「どうして日本のお墓は暗いのだろう」という思いから、バラと季節の花々と緑で霊園をアップデートしたものですが、基本は、故人を偲ぶ場は、どうあるべきかを考えて生み出したものです。

そしてたどり着いたのが「人が集う公園のような霊園をつくる」ということだったのですね。

秋津ふれあいパーク(左) 府中ふれあいパーク(右)

はい。それに加えてお伝えしておきたいのが、なぜバラや季節の花々を植えるのかということ。植栽をして手入れをして自然で美しい風景をつくりだすためには、手間も時間もお金もかかります。ですが、なぜそんなことをしているかというと、美しい自然は人を癒しますが、墓守として、お参りの人がいない時でも、お花を供えてあげたいからなんです。

自然の花は、本物の生花ですし、おひとりさまが増えている今、素敵な考えですね。中本さんはロマンチストですね。今回、霊園の名前にも冠しているほたるを育成するというのも、そんなロマンチストなところから出てきているのでしょうか。
夜空に舞うほたるはあなたおかえりなさい

私がロマンチストかどうかは分かりませんが、あの世とこの世が最も近くなるお彼岸や、ご先祖様の霊をお迎えするお盆など、亡くなった方は、大切な人に会いに帰ってくると思うのです。夜空に舞うほたるには、そんなイメージがあって、古墳墓をつくるなら、水辺をつくり、ほたるを育成したらどうかと思いました。

私は世界に誇る日本古来の古墳文化を甦らせ、みなさまに提供したいという想いでしたので、なぜほたるが出てくるのかと思っていましたが、そういうことだったのですね。

イメージキャラクターほたるちゃんとほたるちゃんのほたる

ほたるがいなくても、もちろんいいのですが、天丼のエビの尻尾問題と同じで、あるとないとでは大きな違いがあると思うのです。庭園式樹木葬では、植栽維持費にお金がかかるのではないですか?と必ずいわれます。ですが植栽維持費は、その霊園を選ばれた方々で支えれば、大きな金額にはなりません。また花や緑を植えると手入れという管理も大変になるのですが、これまでの経験からいうと手入れを一生懸命している霊園ほどお客様の評判がいいのです。手入れをしているのですから、きれいなのは当たり前ですが、そういう霊園ほどお客様との関係ができていて、評判がいいのです。何を言いたのかというと、霊園という場づくりは、つくったら終わりではなく、植物もそうですが、手間暇かけてみんなでつくり上げていくことが大切。そのための仕組みづくり、コミュニティづくりが本当に大切だと思うのです。
霊園はみんなで育てるものという想い

中本さんは、ゆくゆくは「ほたるの鑑賞会」や「バラの栽培教室」、「マルシェ」などの開催、「ドッグラン」もつくりたいとおしゃっていましたが、それはそんな仕組みづくりの一環なのでしょうか。

(左から)マルシェイベント・ほたるの鑑賞会・バラの栽培教室・ドッグラン ※掲載の写真は、イメージです。実際のものと異なります。

まだ実現できるかどうかわかりませんが、霊園は育てるものと思っていますし、そのためには、つながり、喜び、楽しさということも重要なファクターだと考えています。

樹木葬古墳墓のまわりに舞うほたる、そしてその鑑賞会。ぜひ実現させてください。ぜひ参加させてください。

株式会社前方後円墳 代表取締役 竹田 恒泰
竹田 恒泰
TSUNEYASU TAKEDA
(株)前方後円墳代表取締役。昭和50年、旧皇族・竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫。慶應義塾大学法学部卒業。高松ほたるロースガーデンの樹木葬古墳墓は、国史と日本文化の研究者である竹田恒泰が中本隆久とコラボレーション。前方後円墳の形を忠実に再現した竹田式古墳墓の第一弾。

ココ・プランニング 会長 中本 隆久
中本 隆久
TAKAHISA NAKAMOTO
父親が急逝し、家業の石材店いせやを継ぐ。1995年に日本初の庭園式樹木葬「佐倉ふれあいパーク」を開園。NHKで紹介されると人気の霊園となる。いせやにて、7つの「ふれあいパーク」を手がけ、2010年に(株)ココ・プランニングを設立。霊園アーティストとして、中本式樹木葬を全国に創り続けている。